コラムVol.11 身体にも“美味しい”食事でありたい
- S
- 1月10日
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更新日:2月26日

霜降り肉や脂肪たっぷりの豚肉、クリームたっぷりのデザート。私たちが「美味しい!」と感じる食べ物はいくらでもあります。脂質や甘味が魅力的に思える瞬間は、誰しも経験があるはずです。しかし、この“美味しさ”がそのまま健康につながるかというと、なかなか肯定的な意見は見当たりませんよね。そこで浮かぶ疑問は、「脳が美味しいと判断する理由」と「本当に身体に必要なもの」の関係。実際、脂や糖分を欲するのは、私たちの身体がエネルギー不足を補おうとするサインともいわれています。けれど、現代の食環境では簡単に手に入るため、必要以上に摂り過ぎてしまいがちです。
「食べたい」と思う気持ちには理由がある
「食べ過ぎたあとに、ブランド肉の美味しいものを誘われてもあまりそそられない」「空腹でスーパーへ行くと、つい買いすぎてしまう」。こうした行動からも、私たちが食欲と満腹感を繰り返す生き物であることがわかります。そもそも人間は、食料が十分に手に入りにくかった時代を長く生き抜いてきました。そのため「あるときに食べられるだけ食べよう」という本能が組み込まれている可能性があります。逆に、満腹になれば脳は「もう必要ない」と判断し、美味しさを感じにくくする仕組みが働くのです。

たくさん食べることが“もてなし”だった頃
日本には「出されたものは残さず食べる」というマナーがあります。これは一見すると食品ロスを減らすSDGs的な考え方と重なりますが、もともとは物資が少なかった時代の名残でもあります。当時は「食べたくても十分に食べられない」ことが多かったため、一度の食事でどれだけもてなせるかが重視されたのです。今や食料はかなり豊富にありますが、「もてなし=量をたくさん」「テレビで大食い自慢」など、一昔前の価値観や文化が根付いていることも多いですよね。それが場合によっては食べ過ぎにつながり、結果として健康を損ねることもあります。

“必要な美味しさ”を取り戻すために
では、どうやって「本当に身体が欲しているもの」を見極めればいいのでしょうか。おすすめの方法としては、以下のようなポイントが挙げられます。
空腹度のセルフチェック
食事の前に「自分はいまどのくらい空腹か」を数値(10段階など)で判断する習慣をつける。食べ始めの目安にすることで、食べ過ぎを防止しやすくなる。
ゆっくり噛んで味を確かめる
脳が満腹を感じるまでには少し時間がかかります。早食いをすると必要以上に食べ過ぎやすいので、一口ごとにしっかり噛んで味わうと、より身体の声に気づきやすいでしょう。
腹八分目を意識する
「まだ少し食べられそう」と感じるくらいで箸を置くと、食後の満足感を損なわずに健康的な摂取量を保ちやすくなります。日本の伝統的な“腹八分目”の考え方は、実はとても理にかなった方法です。
栄養バランスを考える
たんぱく質・炭水化物・脂質・ビタミン・ミネラルなどのバランスが整うと、身体は必要以上に特定の味を求めなくなる傾向があります。特に野菜や果物を十分に摂ることで満腹感の質も変わってきます。
さらなるヒント
“美味しさ”の裏側を知る
人間の味覚は、エネルギーや栄養状態、ホルモンバランスなどと密接に関連しています。甘味や油脂への欲求は本能的なものですが、それが現代の食環境と噛み合わないことで、肥満や生活習慣病リスクが高まるケースも。自分の味覚の癖や好みを理解したうえで、あえて食生活をコントロールしてみるのが大事です。
食後の身体の変化に注目する
「お腹が重い」「食後すぐ眠くなる」「逆にエネルギッシュになる」など、食事が身体にどんな影響を与えているかを観察してみてください。単純に“美味しかった”で終わらせず、その後のパフォーマンスがどう変化したかを振り返ると、自分に合った食事の量や質が少しずつ見えてきます。
心の満足度を大切に
ただ栄養を摂ればいいというわけではなく、心が満たされる食事であることも健康維持にとって重要です。好きなものを適量食べて幸福感を得ることは、精神面でもプラスに働きます。過度な我慢やストレスは結局リバウンドを招きやすいので、長い目で見て“持続可能な”食生活を意識しましょう。

昔は食べ物が手に入りにくかったからこそ
少し前までの日本では、食べ過ぎたくても食べられない時代がありました。振り返れば、そのような時代の方が“必要量”と“摂取量”のバランスは自然に保たれていたのかもしれません。現代では食料が豊富になった一方で、自分でしっかりとコントロールする意識が求められています。
まとめ
“美味しい”と感じるものを心から楽しみつつ、身体にとっても“必要な美味しさ”を見極めることが大切です。食欲は生きるための原動力ですが、現代社会では容易に満たされ過ぎてしまう面もあります。だからこそ、身体の声に耳を傾ける、満腹のサインを見逃さない、そして本当に食べたいものを適量味わう。その積み重ねが、健康と美味しさを両立させるヒントになるはずです。
必要なタイミングで必要なだけ、心も身体も満たされる食事のあり方を、ぜひ日々の生活の中で模索してみてください。今まで以上に“美味しさ”の深みを感じられるようになるかもしれません。
